過去からの解放
(奥さんブログ)
がんですと言われると、人は過去を後悔します。私も、一つ一つの過去を拾い上げては後悔し、泣き崩れました。
しかし、がんの先輩方のブログを見ていると、みなさん明るくポジティブなことに圧倒されます。
なんで?がんだよ?
大丈夫とかどうして言えるの?
そういう疑問が消えませんでした。
でも最近、少しだけ理解できたことがあります。
がんは、インフルエンザウイルスと違い、もともとは自分の細胞です。自分が育てた子供なのです。
がんって、反抗期の女子なのではないかと思います。集団になると気が強くなって、先生や親に悪態をつくような子なのです。
でも本当は寂しがり。
だから、親にぎゅっと抱きしめてもらうと「うっせーなババア」とか言いながら、実は嬉しかったりするお年頃の女の子なのです。
だから、私が過去を悔いて泣き叫ぶのは、グレた自分の子供と話し合うことなく、距離を置いていることになるのではないかと考えました。
これでは、仲直りすることができません。
また、子供にだってグレた理由があるはずです。私の接し方が悪かったのかも知れません。愛が足りなかったのかも知れません。親である私に、ただ認めて欲しかっただけかもしれません。
そこで私は、悔いていることや引きずっているいやな思い出を、すべて書き連ねてみました。つらかったことを思い出すことは、心に非常に負担がかかります。
書いてみて気付いたのですが、それらの経験はみな「私をもっと理解してほしいのに」という不満とつながっていました。
だから、自分の心に対してこう言いました。
私は、私の一番の理解者だよ。
誰よりも一番愛しているよ。
親が子供を諭すように、自分の心や細胞のひとつひとつに伝えました。
たったそれだけのことでしたが、心がすっと楽になりました。
あんなに泣きながら書いたリストでしたが、読み返しても泣くことはありません。きっと、私の中のグレた子供達も納得してくれたのではないかと思います。
さらに、先に書いたがんの先輩方のように、ちょっとだけ前を向く気になれました。
がんは、手術したら元気になる他の病気と違い、手術したあとがぐんと辛くなるといいます。でも、少しだけがんばる勇気が出た気がしました。
感情の淀みを持ち続けるのは、そこに新たながんが発生する可能性があります。
医者は、すでに症状がでた身体の治療はしてくれますが、その症状をつくった心は自分にしか治せません。それに気付いて、治そうという意欲がでた。
それだけで、自分で自分を思いきり誉めてあげたいと思います。